はじめに
【伊勢志摩G7サミット】のラペルピンをデザインを担当した後、サミットのプロジェクトに関わりのあるパールの業者さんから特殊な真珠を見せてもらいました。
それが今も商品として展開している「TWIN PEARL」シリーズの双子のあこやパールです。

素材を活かす
janukaでのデザインには、いくつかのアプローチがあります。前回の記事で紹介したBandシリーズのように、新しい技術や斬新なアイデアを取り入れ、ジュエリーに新たな視点を加えることもあれば、別のアプローチでは、素材そのものの魅力を最大限に引き出すことに重点を置きます。
特に自然素材の持つ独特な造形や質感を大切にし、素材の個性が際立つようにデザインすることです。このようなデザインでは、自然界の素材が持つ自然な形や色、テクスチャーを活かし、それらが引き立つように配慮しています。twin seriesはその後者に該当し、特に自然素材の魅力を最大限に引き出しながら、ジュエリーとしての美しさを表現しています。
双子パールとは?
その名の通り、双子のあこやパールですが、その背景には養殖ならではのストーリーがあります。
かつて、あこや真珠の養殖が盛んだった時代、本来は母貝に核を1つだけ入れるところを、同時に2つ入れて生産量を増やす試みが行われていました。しかし、狙い通りに2つの真珠ができるとは限らず、偶然くっついた状態で成長するものもありました。このような真珠は「双子真珠」と呼ばれています。
しかし、この方法は母貝への負担が大きく、現在では小さなベビーパールサイズを除いて廃止されています。そのため、大きなサイズの双子真珠はすでに生産されておらず、デッドストックとして残っているものしか手に入らなくなっています。
現在販売している「TWIN PEARL」は、養殖業者の方々が大切に保管していたデッドストック品を買い取り、商品化したものです。
双子パールの希少性
販売するにあたり、めずらしさだけではなくあこやならではの美しさにもこだわり、ただでさえ少ない母数の中からさらに厳選して綺麗なピースだけを選定しています。
一般に流通している丸い真珠であっても、高品質と認められるものは品質ピラミッドの上位10%程度でしょうか。同様に、偶然の産物である双子真珠の中からも、美しく照りがあり、2つのパールの大きさが揃っていて、傷がほとんどないものとなると、一度に仕入れられる数はかなり限られます。
真珠の浜揚げは、一般的に12月から2月頃に行われます。この作業では真珠貝から真珠を取り出しますが、この時期は真珠の表面光沢が最も美しくなるため、質の高い真珠が得られる重要なタイミングです。しかし、この限られた時期にしか産出されないため、真珠の入手機会も多くはありません。デッドストックの双子真珠も、新しく浜揚げされた真珠と同時に競売にかけられるため、入手の難しさが増しています。
無調色という贅沢
「TWIN PEARL」シリーズでは、調色を施していない無調色の真珠を取り扱っています。そのため、双子真珠の色が左右で微妙に異なる場合がありますが、これは無調色ならではの特徴です。
調色とは、真珠の表面の汚れを取り除いた後、色を調整する加工のことです。まるで化粧を施すように、真珠本来の美しさを引き出し、ネックレスなど複数の珠を組み合わせるジュエリーにおいて色味を統一する目的で行われます。品質の良し悪しを決めるものではありませんが、無調色の真珠は非常に貴重です。「TWIN PEARL」は、もともと双子という点でも希少ですが、さらに無調色であることで、より特別な価値を持っています。
今まであまりこのような視点で真珠を見たことがない方にも、ぜひその複雑で美しい色合いを直接ご覧いただきたいです。

伊勢志摩G7サミットでのラペルピンデザインがなければ、これほど多くの真珠と出会う機会はなかったかもしれません。
真珠は人類最古の宝石と言われておりますが、現代では養殖技術の恩恵を受けて自然が生み出した美を気軽に楽しめるようになりました。
かしこまった冠婚葬祭のイメージが強い真珠ですが、ぜひ日常の装いにも取り入れてみてください。
