個性が輝く真珠展—眠れる宇和島パールの新たな息吹
2014年9月、PASS THE BATON OMOTESANDO GALLERYにて、愛媛県宇和島市産の真珠を使ったジュエリー展が開催されました。本展はギャラリー・ドゥ・ポワソンが監修を務めました。
市場の流通基準から外れ、形や色に個性があるために一般に出回らなかった真珠は、生産者のもとで長らく眠ったままとなっていました。この展覧会では、そうした唯一無二の真珠を活かし、16組のジュエリーブランドが特別な作品を制作し、発表しました。個性的な真珠の美しさと新たな可能性を提案する機会となりました。
個性を生かすデザイン—「UWAJIMA」の雫型パール
このプロジェクトで使用された真珠は、一般的に流通する丸いものではなく、少しいびつな形をしたものでした。さまざまな形がある中で、特に雫型の真珠に魅力を感じ、その歪みを隠すのではなく生かすデザインを考えました。
尖った部分に穴を開けて金具を取り付けることで、個性を引き立てるジュエリーが完成しました。現在は真珠の入手が以前よりも難しくなっていますが、このデザインは「UWAJIMA」として今も制作を続けています。
UWAJIMA PEARLから繋がる出会い
PASS THE BATON表参道での展覧会をきっかけに、三重県真珠振興協議会から声がかかり、2016年の伊勢志摩G7サミットで使用されるラペルピンのデザインコンペに参加しました。
当初は深く考えず、「良いデザインを作ろう」という気持ちで取り組みましたが、採用が決まると話は一気に大きくなり、「三重県最高品質の真珠を使用」「各国の代表が着用」「NHKの密着取材が入る」と、想像を超える規模のプロジェクトに発展しました。
ブランド設立3年目の若手デザイナーによる快挙として大きな注目を集め、テレビや新聞の取材が殺到。記者会見まで開かれ、周囲はちょっとしたお祭り騒ぎに。
当時アトリエを構えていた創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」には台東区長が表敬訪問に訪れ、新宿伊勢丹でのPOP UP開催中には伊勢丹の幹部が視察に来るなど、普段とは違う貴重な機会となりました。
G7サミットのラペルピン—デザインの力を実感した瞬間
一番嬉しかったのは、普段は「記号的」なバッジを着けることを拒否している首脳が、「これはデザインがいいから」と着けてくれたと聞いたときでした。
テレビで、伊勢神宮の前に横一列に並んだ首脳陣たちが、自分がデザインしたラペルピンを着けている姿を見たときは、なんとも不思議な気持ちになりました。
もう9年も前のことですが、今振り返ってみても、とんでもない好機に恵まれた出来事だったと感じます。